ソチ・オリンピックが始まりました。
ぼくが注目している競技は、女子アイスホッケーです。
理由は2つで、1つはいちばん好きなマンガが『行け!!南国アイスホッケー部』という作品だからです。知らない方も多いかもしれませんが、作者は久米田康治というマンガ家で、ジャンルとしてはスポーツ・・・ではなく下ネタになります。ごく初期にはアイスホッケーをやっていましたが、途中からはバリバリの下ネタマンガとなり、もし下ネタ・オリンピックなるものが存在するなら、間違いなく日本代表として金メダルが狙える作品です。
ぼくはこの人の作品がとても好きで、個人的には彼のキャリアハイは『かってに改蔵』という作品だと思います。この『かってに改蔵』という作品も大好きで、驚異的に完成度の高いギャグマンガなのですが、『行け!!南国アイスホッケー部』は彼のデビュー作であり、お世辞にも完成度が高いとは言えません。ただそこには粗削りゆえの勢いや熱気があり、最初と最後では絵も作風も全く変わっていて、マンガ家・久米田康治の進化を感じることができます。
欠点がないことよりも、たった1つでもいいから何かを信じ、失敗を恐れることなく力を尽くす潔さの方が美しいと思うので、ぼくの中では『行け!!南国アイスホッケー部』が金メダルです。
でもこの作品を薦める気は全くなくて、それは下ネタが全開だからです。昨年、『はだしのゲン』の図書館での閲覧制限が問題になりましたが、当院の待合に『行け!!南国アイスホッケー部』を置くかどうか、オープン当初からずっと迷い続け、実は今もまだ葛藤しています。なにしろオリンピック級の下ネタなので、保健所の立入検査で
「なんだこの下品なマンガは!」
と怒られたらどうしよう?と、危惧してしまうからです。
ではもう1つの理由ですが、日本代表には床(とこ)という選手がいます。実は幼なじみに床という男がいて、珍しい名字なので最初は彼の子どもかと思い、リサーチしてしまったぐらいです。もちろん彼の子ではありませんでしたが、それ以来女子アイスホッケーに注目するようになってしまいました。
床君とは家が近所だったこともあり、幼稚園の頃からよく一緒に遊んでいました。以前に「お盆の夜」という回で書いた急な坂道を、ぼくらはよく自転車で一気に下ったものでした。
たしか小学6年生の時、2人乗りでその坂道を攻めてみようということになり、協議の結果、ぼくが運転し彼が後ろに乗ることになりました。かなりの急勾配のためスリルは半端ないですが、それを乗り越えて下った暁には最高の爽快感とともに風になれるという特典付きです。
スタートして徐々に加速していくと、真正面から受ける風もどんどん強くなっていきました。やっぱりこの時も最高に気持ちよくて、さらにそれを友だちと共有しているという一体感も加わり、いつも以上に気分は高揚していたように思います。
そして満足感でいっぱいのまま、坂道の終わりが近づくと少しずつブレーキをかけ、平地に着いたので自転車を止めると、
「やったな!」
と親指を立て後ろを振り返りました。
しかし、そこにあるべきはずの床君の姿はなく、一瞬、彼が本当に風になってしまったのかと思いました、が・・・
ふと見上げると、さっき下ってきた坂道の途中になにか黒い物体が落ちているのが目に入りました。急な坂道なので自転車をこいだままでは登れず、自転車を押して急いでそこまで行くとズタボロになって倒れている床君を発見しました。どうやら途中で振り落とされたようで、初夏の小学生なので半袖半ズボンであり、むき出しの手足は傷だらけでした。
「うぅ・・・」
と呻く彼を見ながら、
「まずいな」
とぼくは思っていました。というのも、少し前に彼を川に落としてしまい、彼の母親からかなり怒られたばかりだったのです。
今回はわざとじゃなく事故だったんです、と言っても信用してもらえないだろうなあと思い、ある決意を固めました。彼を抱き起こして肩を貸し、坂道をゆっくりと歩いて下り町内まで戻ると、彼の母親にバレないように傷の手当てを秘密裏に行いました。
彼はサッカーが好きでブラジル人疑惑がかけられるほど色が黒く、そのおかげで傷も目立たず彼の母親にも発覚せずにすみました。この時の体験が、医者になろうかな?という気持ちが芽生えた原体験かもしれません・・・
なんだかソチ・オリンピックと全く関係がなくなってしまいましたが、途中からアイスホッケーをしなくなり最強の下ネタ・マンガになった、『行け!!南国アイスホッケー部』へのオマージュと思っていただけると光栄です。
今後ともよろしくお願いします。