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あっち側とこっち側(こっち側編)

2017年07月17日

前半の続きになりますが、人に何かを勧めるということはとても難しいことです。
それを最も痛感する場面の一つが個人的には本屋で、書店員さんが手作りのポップで勧めてくる本を信じて買って読んでみて、かつて面白かったためしがありません。
さらにそのラスボス的存在はやはり「本屋大賞」ということになると思いますが、この「本屋大賞」が勧めてくる本も最初の3回くらいは買って読んでみたのですが、さっぱり面白くありませんでした。
これはとても個人的なことになるのですが、ぼくは物事を捉える時に真ん中に線を引き、あっち側とこっち側に分けて考えるという作業をよくやります。
たとえば本に関してならば、「芥川賞」や「直木賞」はあっち側で、一般の読者はこっち側、という具合です。
さてそれでは「本屋大賞」は、一体どちらに属するのでしょうか?
本屋大賞実行委員会によると、「本屋大賞」とは本と読者を最も知る立場にある書店員の投票により受賞作が決まる、ということを売りにしているようなので、彼ら的にはひょっとすると真ん中辺り、あわよくばこっち側の立場で選んでいるつもりなのかもしれませんが・・・
残念ながら思いっきりあっち側で、あっち側にいるという自覚がないのならば、四捨五入すると「芥川賞」や「直木賞」とそんなに大した違いはありません。
昨年ぼくは町内会の班長だったので集会に何度か出席したのですが、そのたびに町内会長さんが
「この町内会も年寄りが増えてきて、声かけとか見回りをしないといけないから大変ですよ」
とよく冗談めかして言っていました。
ちなみに町内会長さんはおそらく60代後半くらいで、彼は明らかに自分はまだこっち側にいるという立場で語っていたのですが、ぼくから見れば彼は立派な年寄りで、つまりは明らかにあっち側の世界の住人なのにその自覚は全くなさそうでした。
さて、ぼくは医師であり、できるだけいろんな場面でこっち側の立場でありたい、とは思っているのですが、残念ながら完全にもうあっち側の人間であり、一応その自覚はあるつもりです。
あまりにも長い間医療の世界に身を置いてきたので、ぼくにとっての常識がこっち側=一般の人たちにとっては実は非常識でしかない、ということはわんさかあるのでしょう。
だとしても、です。
それでもぼくは、限りなくこっち側に近いあっち側であり続けたいと願っています。

これを「胴付長靴」と呼ぶことを最近知ったのですが、長靴をこっち側とするなら限りなくあっち側に近いこっち側の存在であり、目指すところはこの逆です。
今後ともよろしくお願いします。

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