最近知り合った若者は、ヤンキースへの入団が決まった田中投手と同じ昭和63年生まれです。翌年からが平成ですから、とりあえず平成の間は年齢では迷うことがなさそうでうらやましいかぎりです。そんな彼と最初に意気投合したのは、「うどんが好き」という共通点でした。
「恋人にするならラーメンだけど、結婚するなら絶対にうどん」
「○亀製麺に行ってる人は、家でどん兵衛でも食べてればいいと思うんだ」
「最後の晩餐は、うどんで決まり」
などこちらが熱い思いを語り終わると、今度は彼の番でした。
「××という店がおススメです。マスターが東京で修業してたんですけど、それがなんと天ぷらの店で。だから、そこのかしわの天ぷらが最高なんですよ~」
「いいね」
「はい。△△もいいですよ。ここもですね、天ぷらが本格的で・・・」
「あれ、ちょっと待って」
「はい?」(相棒風に)
「ひょっとして・・・うどんというより、天ぷら好き?」
「あ!」
彼は香川の人なので、自分はうどん好きであるとずっと信じて疑っていなかったようです。
しかし、好きな店の決め手になっていたのが、うどんよりも天ぷらであったことに初めて気付いたようでした。赤ちゃん取り違え事件でたとえるならば、本当の親はうどんではなく天ぷらだったという話で、その事実を受け入れるのには時間が必要そうでした。うどんよりも天ぷら好きと発覚してしまいましたが、彼とはその後も変わらぬ関係が続いていました。
先日には前出の××という店に一緒に行き、名物のかしわざるを食べてきました。ある意味でDNA鑑定のように、うどんか天ぷらか、彼が最初に口にするのは果たしてどちらなのか?ひそかに注目していました。が・・・
残念ながら、彼がまず食べたのはうどんではなくかしわ天でした。やはり彼は天ぷらの方が好きなんだなと再確認し、
「この天ぷら王子!」
と声をかけると、
「エヘヘ・・・」
と彼もふっ切れたように笑っていました。
まさかこの後、新たな事実が発覚するとは知るはずもなく。
それからの帰りの道中では、彼がまた新たなお気に入りのうどん店について話していました。
「□□が飽きないですね~、おにぎりが絶品です」
「天ぷらじゃなくて?」
「そこは天ぷらないんですよ」
「それでもいいんだ」
「そうですね」
ということは・・・
「もしかして、天ぷら好きというよりサイドメニュー好き?」
「そうです!それですよ!」
この時の彼の反応は、前回の天ぷらの時とは全く違いました。あの時はなんとなく釈然としない感じでしたが、うどんよりも天ぷらが好きという事実を受け入れるだけの心の準備ができていないためかと思っていました。
しかし、そうではありませんでした。
彼が本当に好きだったのはサイドメニューであり、天ぷらだとその一部にすぎなかったのでスッキリしなかったのだと思われます。彼は自分の真の姿を知り、ようやく心の底から合点がいったようでした。1人の若者が自分を探し、そして本当の自分に出会う瞬間に立ち会うことができて貴重な体験でした。
今後ともよろしくお願いします。
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自分探しの旅
2014年01月30日