いや~感動しました、ラグビーワールドカップ!
なんといっても南アフリカ戦の最後の攻撃が劇的で、同点ではなくあくまでも勝利を狙う姿勢には本当に勇気づけられました。
というわけで、せっかくもらった勇気なのだから振り絞らなきゃ損!ということで、あえて告白しちゃいますが・・・
実はぼくはあまりラグビーが好きではありません。
というか、結構大嫌いです。
ではなぜそんなに嫌いになってしまったのかというと、話は高校時代までさかのぼります。
高校に入学したぼくは、特に部活に入る予定はありませんでした。
というのも、中学時代は一応水泳部に所属はしていたものの、後半はほぼ隠れキャラと化していたこともあり、自分には部活というシステムが体質的に合わないな、と思っていたからです。
しかし、なぜか山岳部に入ることになってしまい、幸いなことに1年生はこの超マイナーな部活にしては珍しく7人もいたので(残念ながら全員♂でしたが)、高校での部活ライフはなんだか充実しそうな予感に満ちあふれていました。
ところが、ぼくたちの行く手にはとんでもない試練が待ち構えていたのでした。
実は山岳部には2年生がいなかったので、もしその年に1年生の入部がなく3年生が夏休み前に引退したら、そのまま廃部になる運命だったそうです。
その際には山岳部の部室はラグビー部が使用する予定になっていたらしく、ぼくらが入ったために部室が自分達のものにならなくなったラグビー部の怒りは相当なものでした。
部室の前を歩いていると突然タックルされてふっ飛ばされたり、不意にラグビーボールが飛んできて後頭部を直撃したり、このままではヤバすぎると本気で身の危険を感じるようになっていきました。
そんなわけで仲間と話し合った結果、夏休み前にはぼくを含めた4人がそそくさと退部しました。
ちなみに残った3人はというと、その後もラグビー部からの猛攻に耐え抜き、最後まで部活をまっとうしたらしいのですが、そりゃあの猛攻に比べたら山登りなんて楽勝だったことでしょう。
以上がぼくがラグビー嫌いになった経緯になりますが、せっかくなので山岳部の思い出で今回は終わりにしたいと思います。
とはいえ、わずか3ヶ月ぐらいの在籍だったので、そんなに思い出もないのですが、あれはたしか初めての試合で、鳥取県の名峰、大山(だいせん)に登った時の話です。
途中でテントを張ってキャンプみたいな夜を過ごしながら、2泊3日の割とのんびりした日程で大山を登っていき、その2日目の午後に事件は起こりました。
後にそろって辞めることになる4人で談笑しつつ登っていたのですが、ふと気付くとAが途中で立ち止まっており、やや後ろに取り残されていました。
「どうした?」
と口々にAに声をかけつつも、彼のあまりの顔色の悪さや雰囲気から、この時彼に何が起こっていたのかは誰しも見当がついていたと思います。
「ヤバい」
と言いながら彼は右手をお腹に、左手はお尻に当てるポーズをしたので、やはりAはぼくらの見当どおりの事態に襲われていたことが明らかとなりました。
ちなみに彼の立ち止まった場所は右側にちょっとしたスペースがあり、しかもそこには茂みがあったので、身を潜めて野外ライブを敢行するには絶好の場所でした。なお野外ライブとは、外でアレをすることの婉曲的な表現になります(詳しくは本ブログ『嵐の夜』参照のこと)。
しかし彼とてそれは最終手段に残しておきたかったはずで、結局問題は最寄りのトイレが我慢可能な範囲にあるのかどうかにゆだねられていたのですが、大山デビューのぼくらにはそれがよく分かりませんでした。
するとそこに都合よく先輩の1人が通りがかったので、最寄りのトイレまでどれくらいかかるのかを訊いてみると、
「ん~、トイレは当分ないぞ」
という残念な返事を残して先に進んでいきました。
それでついに覚悟を決めたのかAはおもむろに動き出し、
「ちょっと出してくる」
と言い残して茂みの奥へと消えていきました。
ぼくら残された3人はAの野外ライブが終わるのを待ちつつ、
「Aよ、惜しいヤツを亡くした」
などと弔いながら彼には申し訳ないのですが、こみ上げてくる笑いを我慢するのに一苦労でした。
もちろん一方では門番として、小用などで不届き者が茂みの奥に行かないようにAを守っていました。
しばらくしてAが戻ってくると、先程までのひどい顔色は消えて表情は安堵に満ちており、それは野外ライブが無事成功に終わったことを物語っていました。
そこからはつづら折りになった坂道を5分程登り、さらに向きを変えて5分程登るとそこはちょっとした休憩場所となっていたのですが・・・
なんとそこには、普通にトイレがあったのです。
ぼくは思わず吹き出しそうになるのを必死にこらえ、とりあえずAの顔をちらっと見てみると、生まれて初めて怒りで目に炎が映っている人を見ました。
その夜のテントでは
「絶対に許さん!」
と自分を陥れた先輩のところに復讐に行こうとするAを皆でなだめ、大山を血では汚すことなく無事に下山することができました。
今にして思うのは、あの時のAの選択はラグビーの南アフリカ戦でいうと同点を狙った結果であり、本当は勝利を目指して前に進み、あきらめないでトイレを探すべきだったんだなということです。
今後ともよろしくお願いします。