これも患者さんから教えてもらった話なのですが、彼女の働いている会社があまりにもブラックなので、どうしようか迷っているとの相談を受ける機会がありました。
「服を作っている会社なんですけど、生地を切り間違えてもそのまま使っているんです」
うーん、たしかにひどい話ではありますが、インチキだらけのこのご時世、もう少々のことなら驚きを感じなくなっている自分に驚いてしまいます。
「できた服もやっぱりMサイズばかり売れるんで、Sサイズが売れ残るとタグをMサイズに付け替えて売ったりするんです」
え?
なっなんですと?
それってブラックどころか完全にアウトじゃないですか・・・
「さしつかえなければ、どんな服を作ってる会社か訊いてもいいですか?」
と尋ねてみると彼女は少し考えてから、
「・・・学生服を作っています」
とためらいながらも教えてくれました。
おっと~
それってガチでブラックなやつじゃないですか・・・
なるほど学生服なら着るのは育ち盛りの子どもなわけだし、多少小さく感じても
「そっか、オレ今成長期だし」
と勘違いしてくれやすく、たぶらかすには格好のターゲットではありませんか!
しかしこの話を聞いてぼくの脳裏に浮かんだのは、たまに訪れる服屋さんのことでした。
その店は若者を主なターゲットにしているらしく、とにかくサイズが小さめなのが特徴です。
ぼくは普段はMを着ているのですがその店のMだとやや窮屈になるので、
「これ本当にM?なんか小さくない?」
と口にすると
「Mですよ、うちは若者向けなんで。最近の若い人はスリムなんですよ」
と返されるのがお約束のパターンで、そういうことなら負けられない!とつまらない意地を張ってしまい、結構ピチピチの服を無理して着ていたのですが・・・
あれって実は売れ残りのSだったのでは?
という疑念がふつふつと湧きあがると、怒りのあまり体に力が入りすぎてしまい、その服だったらボタンがはじけ飛んじゃった可能性もあり、今日は着てなくてよかったとホッとしたものでした。
実はその店にはもう1つ不満がありまして、ポケットが異常に少なく、そして小さいのです。
コートやジャンパーなどの普通の上着であれば基本は腰ポケット2つで内ポケットなし、たま~に運がいいと内ポケットが付いてます。
しかもそのポケットがビックリするほど小さく、サイフなんか入れた日には落ちるのが心配に・・・
どころか、そもそも入りません小さすぎて、という有様です。
というわけで
「いくらなんでもポケット小さすぎじゃない?あと数も少ないし」
と不満を述べると、
「うちは若者向けなんで。最近の若い人はポケットにもの入れないんですよ、ポケットなんて飾りなんですよ」
と返されてしまい、ったく・・・なんて不便なんだ!と思いながら、飾りのポケットが付いた服をたまに着ています。
元来ポケットはものを入れるために考案されたはずなのに、衣服の進化の過程で徐々に使われなくなっていき、その結果として単なる飾りに成り下がってしまったということでしょうか?
人間の身体にも進化の名残とされ、今では機能していない部分がいくつかあり、その1つが尾てい骨でこれは人間がかつて尻尾を持っていたことの痕跡と考えられています。
尾てい骨の周囲は床ずれ-正確な医学用語では褥瘡(じょくそう)と呼びます-の最もできやすい場所の1つで、床ずれには時にポケットと呼ばれる空洞が形成されることがありますが、残念ながらもちろん飾りではなくしっかりとした処置が必要です。
でも次の最後の一文は・・・あまり大きな声では言えませんが、ただの飾りにすぎません。
今後ともよろしくお願いします。
クリニックブログ
痕跡器官
2016年03月24日