只今、卒業式のシーズン真っ盛りですね。
残念ながら卒業式にあまり素敵な思い出はなく、最も記憶に残っているのは自分のではなくて、高校2年生の時の一学年上の卒業式になります。
ちなみに1つ上の学年には、謎の長髪の先輩がいて、その不気味な風貌から巷では「ライガー」と呼ばれていました。
おっと、もちろん元ネタはプロレスラーの獣神サンダー・ライガーです。
当時の岡山市の中心部にはわりと大きな本屋が3つあり、紀伊國屋が独走状態だったところに、新しくなったばかりの丸善が台頭してきていて、両者がしのぎを削っている状況でした。
で、3つのうちのあと1つはというと、表町の商店街にあった、今はなき細勤舎(さいきんしゃ)という本屋になりますが、古く汚い実に昔ながらの書店で、前2者をライバルと呼ぶのは申し訳ないほど、文字どおり完全に後塵を拝していました。
ただ、少年時代に表町に行った際には、細勤舎でマンガを買ってもらい、これまた今はなき、すわきでラーメンを食べる、というのが至福の黄金パターンだった身としては、そう簡単に裏切って乗りかえるのは気が引け、なんだかんだで3つのうちで最もよく利用する本屋でした。
その日-ライガー先輩の卒業式の日も、たしか2年生は休みだったので朝から細勤舎を訪れたのですが、店内をほっつき歩いていると、衝撃的な光景が目に飛び込んできました。
なんと卒業式に参加しているはずのライガー先輩が、学ラン姿のまま思いっきり立ち読みをしていたのです。
もちろん留年して卒業できないという可能性はありましたが、無事に卒業するものと仮定すれば、卒業式をサボって本屋に出没し、しかもそれがレトロな細勤舎という選択はいかにも彼らしく、
「さすが獣神」
と、すっかり感心してしまいました。
なお、今の若い人には信じられないかもしれませんが、ドラえもんなど昭和のマンガによく出てくる、立ち読みしているとハタキでパタパタされる、というこのご時世からすると嘘みたいな行為が、ぼくが子どもの頃はまだギリ残っている世代でした。
というわけで、ライガー先輩は面接であれば一瞬で落とされるであろう絶望的な外見であり、彼が立ち読みしていた日には営業妨害は間違いなしであったため、店の人が登場してハタキで攻撃を開始するのは時間の問題と思われました。
その場合、彼がその長髪を振り乱しながらプロペラのように回して応戦し、卒業記念ラストマッチが見られるかも?と期待でワクワクしたのですが・・・
結局、店員は姿を見せなかったのでガッカリでした。
そういえば男性の方には共感してもらえると信じますが、散髪の最後に使われる小さなホウキ、
あれ地味に痛くて昭和の本屋のハタキの方が、まだましだったような気がしないでもありません。
今後ともよろしくお願いします。