ただいま世間では大型連休のまっただ中ですが、いろいろと悩んだ結果、ある告白をする決意をついに固めました。
実はぼくはこの世界に、パラレルワールドから迷い込んできたのかもしれないのです。
パラレルワールド-ある世界とは別に並行して存在するというもう1つの世界のことで、SFなどでは割とおなじみの概念になってますよね。
ちなみになぜそんな風に考えるに至ったのかというと、ぼくが前にいた世界では「シルバーウィーク」という言葉がこんなには浸透していなかったからです。
ぼくがかつていた世界では「シルバーウィーク」の認知度なんて、せいぜいイオンの「G.G感謝デー」程度のものでした(G.G=Grand Generationの略で、シニア世代を最上の世代と捉える考え方なんだそうです)。
ああ、一体いつこっちの世界に移動してしまったのでしょうか?
しかし・・・お年寄りにG.G=ジージーってのは論外としても、「シルバーウィーク」ってのも失礼な誤解を招く可能性がある表現ではないでしょうか?と、少年時代に「部落差別」を「ブラック差別」と派手に勘違いしていたぼくは老婆心ながら申し上げたいのです。
なんてったって「敬老の日」があるというのに、シルバーがウィークってのはちょっと問題があるように思います。
え?
気にしすぎじゃないかって?
やはりそうでしたか・・・
では、県外の知り合いに岡山といったらコレ!というものを何か1つプレゼントする場合に、それが「きびだんご」だと家来になれってメッセージがあるみたいで失礼かな?って心配になってしまうのも、ひょっとして気にしすぎなんでしょうか?
でも、もう時すでに遅しです、その人には別のものをあげてしまいました。
ではそれは何かといえば、元「ブラック差別」少年であったぼくが、安全保障関連法案を強引に可決させた現政権のように、独断と偏見で選ぶ岡山のソウルフードはアレしかありません!
そう、キムラヤの「バナナクリームロール」で決まりです。
その人には、これを2個とその中身である「バナナクリームカップ」の小をセットにしたものを、これがたぶん素顔の岡山ですとコメントを添えて渡しておきました。
さて、先程から何気なく進めてきてしまったのですが、そのプレゼントを渡した相手の方について、この辺でそろそろ説明しておかねばなりませんね。
彼は、たまたま行列で知り合いになった、鳥肌が立ったを連発しまくる常に薄着の男性で、行列で1時間ばかり話し込んだことが縁となり、その時は最後にメールアドレスを交換しました。
それ以外にお互いに伝え合った個人情報は姓と住んでいるところだけであり、つまり彼はSさんという姓で、静岡市にお住まいであること以外は何も知らないという状態で別れたのでした。
正直、その後にメールでやりとりをすることはないだろうなと思っていたのですが、折にふれ彼は温かいメールをくれるようになり、中四国を台風が通過しようものなら、
「大丈夫ですかー?」
とびっくりするような朝イチから連絡をくれたりしたので、なんてイイ人と知り合いになったんだろうとこの不思議な縁に感謝をするようになりました。
しかし台風は西日本を襲ってばかりだったので、彼には心配してもらう一方でなんか申し訳ないな~と思っていると、先日は台風18号が静岡県に上陸したとのニュースを見たので、
「大丈夫ですかー?」
とメールを送ってみました。しばらくすると彼からの返信で
「ありがとうございます、気をつけて過ごします」
とあり、これでようやく恩を返せた気になりホッとしたものでした・・・
そして、その翌日の昼下がり。
スマホに彼からのメールが届いていたので見てみると、
「実は、今日から倉敷に入っています。先週決めたので、昨日メールをいただいた時には少し驚きました」
とあったのでこっちはムチャクチャに驚いてしまい、スマホをチェックしていたのがトイレだったので思わず落として水没させてしまうところでした。
やれやれ危なかった~と気を取り直してメールでやりとりをしてみると、その日は木曜日で彼は日曜日の朝まで倉敷に滞在する予定であることが分かりました。
そうとなれば善は急げで、
「今夜、お会いしましょう」
とこちらから提案し、その夜に彼と会食する展開となりました。
うーむ、この急展開、ひょっとしたらこの辺りでパラレルワールドからこっちの世界に移動してきたのかもしれません。
というわけで静岡県人である彼をもてなすため、実は倉敷の店はあまり詳しくないのですが行ったことのある店に電話をかけ、予約を取ることにしました。
そこは2階に個室がいくつかある店で個室希望だったのですが、急な話だったので残念ながら1階のカウンターしか空いていないとのことでした。しかしよく考えたらあまり知らない人だし、カウンターの方が対面じゃないから話しやすいかなと思い直すのに、さして時間はかかりませんでした。そこでカウンターの予約をお願いし、料理については県外の人をもてなしたいのでこれぞ岡山っ!てものをたくさん出してほしいと伝えたところ、
「え?そうなんですか・・・」
と謎の沈黙がありました。
「あれ?どうかしましたか?」
と訊いてみると、
「いえ・・・、ではお待ちしてます」
という意味深な感じの沈黙が気にはなったものの、無事に予約の電話は終わりました。
なんとか店も確保できたので、診療が終わると天満屋の倉敷店に行きました。前述のとおり地下のキムラヤで彼へのパンとクリームを購入し、天満屋の紙袋をもらって中に入れるとそれなりにプレゼントっぽくなったので満足し、それを手に待ち合わせ場所のスタバ前へと向かいました。
よく考えたら彼とは昨年の11月に1回会っただけであり、もはや漠然としたイメージしか残っていなかったのですが、目が合うとお互いにすぐに分かったようでホッとしました。
店は美観地区だったので、スタバ前から談笑しながら歩いていき、しばらくして店に到着しました。
中に入り予約の名前を伝えながらカウンターの方をチラ見すると、カウンターが2席空いていたのでそこに向かいかけたところ・・・
「お客さんは、お2階の個室です」
と店の人に言われました。
「え?カウンターじゃないんですか?」
「岡山のおもてなしをするっていうから、頑張って個室空けちゃいましたよ」
いや~どう頑張ってくれたのかはよく分かりませんが、なるほど謎の沈黙はそういうことだったんですね!
そんなわけで店の人の超粋なはからいのおかげで個室が使えることになり、思わずガッツポーズをしてしまいました。すると突き上げたのが紙袋を持っている方の腕だったので、ちょうどいいタイミングかなと判断し、そのまま腕を下ろして彼にそれを渡しました。
それからは文字どおり身軽になったので階段を軽やかに上がり、お2階の個室に入ると・・・
なんと10人は入れそうな巨大な個室でした!
いくらなんでも頑張りすぎでは?と思いつつ、でっかいテーブルの真ん中に向かい合って座り、飲み物の注文も終えて店の人が下がると2人きりになったので、
「これはちょっと2人には広すぎますよね」
と彼に話しかけました。すると、
「ですよね、鳥肌立っちゃいますね!」
とのことで、ようやく本日初めて彼の鳥肌が立ったところで、飲み物も到着したので乾杯し、なんだかよく分からない宴の始まりとなりました。
だだっ広い個室の影響か、すっかり開放的になったぼくらは方角でいうと右でも左でも上でもない、下の方面のビロウなトークなんかも堂々と大声で交わし合ったりしました。もちろん何度となく彼の鳥肌は立ちまくり、気付けば約3時間半があっという間に経っていて、残念ながら閉店の時間になっていたのでした。
なお肝心の岡山の料理については・・・、話に夢中であんまり覚えていません。
それでも結局、相も変わらずぼくらはお互いの年も仕事も知らぬままで、この不思議な宴は終わってしまいました。個室にしてくれた店の心配りには心からの感謝を伝え、店を出てしばらくしてから彼とは別れました。
後日、彼からメールが送られてきて、バナナクリームロールの感想が綴られていました。
「素朴な、飽きのこない味で、長らく人気を保っている理由が分かりました」
とあり、鳥肌は立たなかったみたいなので少しだけ残念でした。
今後ともよろしくお願いします。