最近では、夏休みの宿題に代行サービスなんて便利なものがあるそうですね。
それでふと思い出したのが、たしか小学2年生の時に出された「カブトムシをとってくること」という宿題のことです。当時は岡山市の東のはずれに住んでいて近くには山もあり、とても自然に恵まれた環境でした。しかし野生のカブトムシなどに出会う機会は、ほとんどなかったように記憶しています。
同じ町内の2学年上には悪魔のような絶対的ボスが君臨していて、その命令には服従以外の選択肢はありませんでした。その日もボスの思いつきで、朝も早くから山にカブトムシをとりに行くことになっていました。正直ボスの命令にはいつもはウンザリしかありませんでしたが、この時ばかりは宿題のこともあって結構ノリノリで参加しました。けれども、成果はさっぱりでした。木に蜜を塗り茂みに身を潜めてカブトムシを待っていましたが、な~んにもやって来やしません。そのうち、ボスが明らかにイライラしてきているのが分かりました。
「くそっ」
とボスは茂みから立ち上がると、ぼくらの方にギロッと視線を向けました。ぼくらとは、以前に「ソチ・オリンピック」の回で友情出演してくれた床君とぼくの2人です。ボスは床君の方をじっと見てニヤリと笑うと
「床、服を脱げ」
と言い出しました。もちろん床君に断る自由などあるはずもなく、彼が服を脱ぐと・・・前にも書きましたがブラジル人も白旗を揚げるスーパーブラックなボディがあらわになりました。そして床君を適当な場所に移動させると、体に蜜を塗りたくり始めました。ぼくにも手伝うように命じ、2人で床君に蜜を塗り終えると
「よし!」
と満足した様子で元いた茂みに戻りまた身を潜めたので、慌ててぼくも隠れました。しかしそれからしばらく経っても、カブトムシの気配は皆無でした。茂みから見える床君が何だかトーテムポールに思えてきた頃、
「帰るぞ」
とボスが小声でささやいたので、床君を残して2人でこっそり帰りました。
今振り返ってもひどい話ですが、要はそのくらいカブトムシなどをとるのは難しかったということです。というわけで夏休みも終わりになると、ミッション完了のためには学区内のペットショップでカブトムシを買わなければなりませんでした。かくしてペットショップを訪れると、同級生にやたらと出くわすわけです。その場合は適当に
「金魚のエサ買いに来たんだ」
など互いに苦笑いでごまかしつつも、実際はカブトムシの値段をチラ見してしっかりとチェックしていました。その結果、手元の軍資金ではカブトムシのメスしか買えないという哀しい事実が発覚して少しガッカリしましたが、その後も何度か同じペットショップを訪れました。そしてついに同級生がいない間隙を突き、カブトムシのメスの購入に成功しました。しかし喜ぶのはまだ早くて、ここからの仕上げが重要なポイントです。
家に帰ると飼育ケースにカブトムシを移し、いかにも夏休み中に飼っていた感が出るように演出しなければなりません。そして偽造工作も無事に終わり意気揚々と夏休み明けに登校すると、ほとんどの同級生はカブトムシのメスを同じような飼育ケースで持ってきていました。まったく、学校は学区内のペットショップから何かもらっているのでは?と疑問を抱かずにはいられませんでした。
しかしそんな中、特異なオーラを放っているカブトムシを持ってきているやつがいました。
「そんなの日本にいないだろ?」
と思わずツッコみたくなるような勇壮な角をしたオスのカブトムシだったのですが・・・
なんと買った時のケースに入れたまんまで、ご丁寧にリボンまで付けっ放しです。
それはおそらく百貨店で買ったもので、なぜなら学区内のペットショップではリボンのサービスなどあるはずもなかったからです。さすがに値札こそ付いていませんでしたが、これはやはり小学生の紳士協定に反するだろうということで、
「お前、買ってきてんじゃねーよ」
と自分たちのことはさておき、皆で彼を責め立てました。すると彼は早々に泣き出してしまい、その後しばらくして担任の先生が教室に入って来ました。皆で今回の件について一通りの事情を説明しましたが、彼は超優等生でいつもエコ贔屓されていたので、
「正直者で大変よろしい」
とワシントンのように褒められておしまいになるのでは?と思っていました。
・・・ところが、
「うん、それは君が悪いね」
と先生が彼をあっさり見放したので、とても意外でした。
今にして思えば、学校と蜜月の関係である学区内のペットショップではなく、百貨店で買ったことへの制裁だったのかもしれません。
頼りにしていた先生からも見捨てられ孤立無援となってしまい泣き続ける彼と、多くのメスに囲まれてハーレム状態となり角を突き上げ興奮している彼のカブトムシとの対比が印象的でした。
今後ともよろしくお願いします。
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2014年09月07日