すごい名前はいろいろとありますが、人形作家の与勇輝(あたえ ゆうき)先生程インパクトのある名前もめったにないと思います。
そのうちブログに書こうと考えていたものの、気付けばあっという間に時が流れていたのですが、実は今年の9月17日敬老の日に天満屋岡山店で開催された、与勇輝展のギャラリートーク&サイン会に参加してきました。
ちなみにこのイベントへの参加システムが少し変わっていて、イベントの開始が14時からで、13時以降に指定のグッズを買った先着50名に参加券が配られるというものでした。
というわけで本当は朝イチで行っていたのですが出直すことにし、12時45分頃に再び会場の物販コーナーに赴き、13時になったら指定のグッズを買う段取りにしていました。
するとレジでおばちゃんが騒ぎ始めたので彼女の言い分に耳を傾けてみると、どうもそのシステムを知らずに早々とグッズを買ってしまったらしく、まがりなりにも買ったのだから参加券をくれてもいいじゃないの、と店員さんに食い下がっているようでした。
品性のかけらもなく騒がしいのでひとまず返品にして、13時に改めて買い直させたらいいだけのように思いましたが、どうやら店員さんも意地になっているらしく激しい攻防が続いていました。
すると業を煮やしたおばちゃんが
「あんたね、こんなモノ、もう1回買えるわけないじゃないの!」
とついに本音をシャウトさせてしまうとその場は一気に静まりかえり、
「あっちゃー」
「とうとう言っちゃったよ」
「言うに事欠いて、こんなモノとは」
といった、そのやりとりを見ていた人たちの、決して声にはならない思いが空間を拡散していくのが手に取るように感じられたものでした。
そして13時が来ると狙いどおり参加券を無事に入手し、14時までは時間があったので個展の方を見て回り、14時になるとギャラリートークが始まりました。
ギャラリートークは会場のスタート地点から、与先生が作品の説明をしながら練り歩いて進んでいくというもので、最後はこの日がなんと誕生日であったという先生を皆でお祝いするという場面もあり、なかなか感動的でした。
もっとも
”Happy Birthday, dear♪ 与先生~♪”
と歌うのは語呂が悪く、
“Happy Birthday, dear♪ 勇輝~♪”
の方が歌いやすかったように思いましたが・・・
そしていよいよサイン会へと流れていきましたが、当然のように長い行列ができていたので、並ぶのが嫌いなぼくは物販コーナーで適当にグッズを買い、行列が短くなった頃に加わることにしました。
このようなイベントに参加したことがない人は想像しにくいかもしれませんが、サイン会もしくは握手会あるあるとしては、最後の一人の争奪戦というのがあります。
最後の方が長めに時間を取ってもらえるような気がするとか、最後に自分の印象を目に焼き付けてもらいたいなど、もちろんその気持ちは十分に理解できるのですが・・・
その後に今回のイベントとは別の、イベント側の人と話す機会があり、サイン会などで最後を狙っている人について教えてもらったところでは、終わったと思ったら次から次にゾンビのように出現してきて、サインする先生は帰る時間もあるし本当に迷惑なんですよね~とのことでした。
ぼくも列の最後尾についた時点では
「え?ひょっとして最後なの?」
とお恥ずかしながら一瞬期待しましたが、すぐに一人また一人と後ろに人は続き、短い夢だったな~と苦笑いしてしまいました。
で、前方でサインをしてもらっている人を見ていると、サインに加えてスマホをスタッフに渡して2ショット撮影をしてもらっていたので、へ~そんなのもあるのかと思いスマホを取り出し電源を入れ準備は万端でした。
そしてついに自分の順番が来ると、買ったグッズにサインをしてもらった上に握手までしてもらい、さらに続いてスタッフにスマホを渡して2ショット撮影の時間です。
するとスタッフから
「あの・・・これでいいんですか?」
と訊かれたのでスタッフのところまで移動してスマホを見ると、なんと初めてお目にかかるような変な画面になっており、どう操作してもまともな写真は撮れそうにない状況になっていました。
おそらく一回電源を落として再起動するしかなさそうでしたが、顔を上げスタッフの方を見ると
「じゃ、写真だけ皆さんが終わったら最後に撮りますから、向こうでスマホを直しておいて下さい」
と優しく対応してもらいました。
ワオ、なんかよく分からないけど最後になっちゃったよとややハイになり、スマホの電源を切り再起動させようと奮闘していると、その時ぼくが立っていた場所に個展の看板があり、そこで写真を撮りたいという人から少しどけて下さいと頼まれたので、そこからさらに離れてスマホをいじっていました。
それから再起動させるとカメラも普通の状態に復活していたのでサイン会の場所に戻ると、ちょうど列の最後の人が終わるところでした・・・が・・・
なっなっなんと、そこに最後狙いのラスボスのおばちゃんがわざとらしく登場してきたのには、正直まいったと思いました。
恥ずかしいとかそういう概念がこの人にはないのか、と呆れながら、まあしょうがないなとあっさり諦め、ささっと写真を撮ってもらおうと思いスタッフにスマホを渡そうとすると、
「あの方が終わってからにしましょう」
とぼくを最後にしてくれたので、その心遣いに激しく感動してしまいました。
なお前述のイベント側の人にこの話をしたところ、
「そりゃムカついたんだと思いますよ~」
と解説してくれました、そーですか、そーですか。
というわけでラスボス、になるはずがなれなかった人の写真撮影も終わり、いよいよぼくの順番かと思いきや、
「終わった~」
と与先生が立ち上がってのびをして、帰りかけたのには完全に意表を突かれてしまいました。
慌てたスタッフの人が
「先生、あと一人写真が残ってます」
と声をかけてくれると、
「ん?あっそうか、ごめんごめん」
と言って再び握手の上に肩までぱんぱんと叩いていただき、人生で初めてこのようなイベントで最後になるという得難い経験を積むことができたので幸せでした。
もちろんカメラのトラブルは偶発的なものですので、さてはお前やりやがったな!とか妙な勘繰りはしないでいただけると幸いです。
今後ともよろしくお願いします。
クリニックブログ
ぼくらの最後尾戦争
2018年11月30日