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田舎電車の奇跡

2013年05月31日

鉄道車両の座席は主に、車両の長手方向に並んで座るロングシートと長手方向に交差する方向に座るクロスシートの2つに分かれます。
鉄道好きの友人にどちらが好きかをたずねてみると、
「絶対にクロスシート!景色が見られるから」
という意見でした。
たしかに外の景色を楽しむにはクロスシートが向いていますが、車内を眺めるにはロングシートの方が優れていると思います。これはそんな、電車の中での出来事です。
その日ぼくが乗っていた電車はロングシートで、乗客はまばら、車窓からは青い空に白い雲、そして緑が一面に広がっていました。
ある駅で電車が停車し、ちょっとした乗り降りも終わり、電車は再び出発しようとしていました。すると、ロングシートに座ってウトウトしていた男性が急に立ち上がり、猛然とドアに駆け込んでいきました。しかし、残念ながら間に合わず、無情にも電車は動き始めました。
彼が足元から崩れ落ちたその時、車内に小さな奇跡が起こりました。

orz

あまりに深い失望のため、彼がこの有名なアスキーアートになってしまったのかと思うほど、その姿は記号的なフォルムでした。生身の人間とは思えないほど完璧なorzを具現化していて、ニューヨーク近代美術館に展示されていてもいいレベルでした。
彼は痩せていて、肌も日焼けしており、さらに上下ともに黒の服装だったのも、奇跡のMr.orzになりえた要因かもしれません。
しかし何といってもロングシートの開放感でなければ、この芸術的orzをこんなにはっきり鑑賞することはできませんでした。
実に素晴らしいものを見させてもらったわけですから、彼への協力を惜しむ気は全くありませんでした。
電子マネーが使えないのは当然として、駅によっては無人のため電車から降りる際に運転士が切符を回収するような田舎の電車です。おまけに乗客も少なく、ボサノバが聞こえてきそうなほどまったりとした雰囲気です。
彼のために電車が止まっても、必要あらば前の駅まで逆走しても全くやぶさかではありませんでしたが、自分の電車で奇跡が起こっているとも知らない運転士は淡々と電車を走らせ続けていました。
彼はその後ゆっくりとorzを解除し、進化の過程のように立ちあがって元いた辺りに座り、スマホを取り出して操作し始めました。おそらく、次の駅から戻る乗り換えを調べているのでしょう。
彼はため息をついて、スマホをしまいました。どうやら思った以上に到着が遅くなるようです。彼は遠い目をして、ずっと反対側の窓の外を見つめていました。
・・・ここでふと、ある可能性が頭をよぎりました。
この電車は正真正銘の田舎電車であり、そして彼はあれだけ非現実的なorzのポーズを現実にしてしまう男です。
勝手な印象ですが、田舎の電車なので窓は開きそうな気がします。もしもアクション映画のように彼が窓から飛び降りたら、やはり止めるべきなのでしょうか?窓からの景色はのどかな田園風景であり、決行しても命に別条はなさそうです。
それでも彼を止めるべきでしょうか?
しかし走行中の電車から人が飛び降りる場面など、そうそう見られるものではありません。
どうしたものかと考えていると頭の中で天使と悪魔がバトルを始め、天使の輪を悪魔が吊革のように握り悪魔が優勢になってきました。
少し後ろめたいですが、またまた貴重な場面を見ることができるかも?
と思っていると・・・車内アナウンスがあり、次の駅が近づいてきたことを知らせていました。
とりあえず、これで彼がダイブすることはなさそうです。
電車が止まり、彼を見送りながら、そういえば田舎もでんしゃと読むことに気付きました。
今後ともよろしくお願いします。

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