「最近なにかいいことありました?」
と唐突に訊かれたので、うーんと考えこんでしまいました。
いいことがなかったわけではないのですが、相手によって内容をきちんと選ばないと自慢に受け取られてしまう可能性もあるので、さてさてどうしよう?と脳内を必死で検索した結果、
「とりあえずこれにすっか」
とようやくネタが見つかって口を開きかけたその時、
「私はですね、娘が・・・」
とこちらの返事を待たずに相手の方(還暦前のおっさんです)は話し始めました。
そっか~、このおっさん、ぼくの話など最初から興味はなかったみたいです。
とにかく自分の幸せ話をしたくてたまらないのだけど、あんまりガツガツしているのも人としてどうかと思い、それでひとまずエチケットとしてこちらに振ってみただけだったんですね。
いや~まさかそんなこととは夢にも思わず、振りを真に受けて本気で語っていたら大惨事になるところでした。
もしもひと通り話し終えた後で、
「そうですか~、そんなことはともかく私はですね、娘が・・・」
なんて完全にスルーされた日には、恥ずかしすぎてとても立ち直れそうにありません。
というわけで相手が質問してきた時には、その内容について自分が話すための振りにすぎないこともあるので注意が必要です。
「ガッポガッポですか?」
と電車でたまたま一緒になった後輩から訊かれたので、これまたうーんと考えこんでしまいました。
こういう場合は「ぼちぼちだよ」とか「まあまあかな」などでお茶を濁せばよいのでしょうが、ここはひとつ逆襲してやろうと考え、
「いや、ガッポガッポじゃないんだ・・・」
と少し暗い表情でつぶやいてやりました。
すると彼は、
「そうですか・・・」
とこちらに同調するようなトーンで返してくれたのですが、
「でも、ウハウハだけどね!」
と一転して明るく発表したところ、
「えー!!!!!!!!!!!!」
とあれ?お前そんなに白目大きかったっけ?と、思わず疑問を抱いてしまうほど目を見開いて驚いていました。
いやいや・・・いくらなんでも驚きすぎだろ・・・
つまり彼はこちらがガッポガッポやウハウハとは思っていないのに、社交辞令でその質問をしてきたようです。
そんなわけで相手が質問してきた時には、その内容についてこちらが否定することを前提で訊いていることもあるので注意が必要です。
今後ともよろしくお願いします。