先日、岡山市は表町商店街にある、明治22年創業の超老舗和菓子店に行ってきました。
この店を知ったのは、ここの不老餅という和菓子を勝負手土産にしている、という人に教えてもらった、というか、まさにその手土産を少し前にいただいたからなのですが・・・
正直なところ、自分はそこまでの感銘は受けませんでした。
しかし、明治22年創業という歴史に心惹かれ、一種のフィールドワークとして、当時すぐに店を訪れてみました。
スマホの地図を頼りに商店街を歩いていったのですが、予想外になかなか店が見つからず苦戦し、画面上では目的地の前を何度も通りすぎては戻って、というのを繰り返しているようでした。
どういうこと?と途方に暮れ、スマホから視線を上げると、目の前には周囲の店よりもぼんやりと霞みがかった光景があり、
「え!?こっ、これはまさか」
と思っていたら、徐々にピントが合っていき、そこが探していたお目当ての和菓子店であったことに気付きました。
止まっているエスカレーターに乗った時に、一瞬、脳がバグって違和感が生じても、すぐに脳が適応して対処できるように、あまりの古さに脳が当初は混乱して店と認識できなかったものの、どうにかこうにか処理してくれバシッと像が定まった時には、ちょっとした感動を禁じ得ませんでした。
以来、なぜだか自分でもよく分かりませんが、折にふれ店を訪れています。
直近の先日は午前中に行き、まさに翁といった趣きの店の主人と話していたのですが、
「今日の4時半、NHKが来るよ」
と唐突に教えてくれました。
ただ意味があまりよく理解できなかったので、
「どういうことですか?」
と訊いてみると、どうも11月1日から始まるNHKの朝ドラの宣伝的な番組の撮影の一部が、その日の午後4時半から店で行われるようでした。
撮影スケジュールの予定表も見せてくれたのですが、そういったものを実際に目にするのは初めてだったので、
「これ、写真に撮ってもいいですか?」
と冗談半分でお願いしてみました。
すると意外にも
「ああ、いいよ」
と撮影許可が下りたものの、いや、そこは断らないと普通にダメでしょ・・・
NHKは、もっと厳重に口止めした方がいいと思います。
まっ、お言葉に甘えて写真は撮っちゃいましたが、あくまでも個人的な利用にとどめておきますので、どうかご安心下さい。
なお翁によると、
「(NHKから)話があったのは、たしか2月か3月頃じゃったな」
とのことで、おそらくその計画を立てた人は、この店を実際に訪れたことがないと思われます。
そうでないとしたら、よほどの楽天家か、もしくはプランBがあったとしか考えられません・・・
要はそれくらいの、古色蒼然とした歴史的な店ということです。
それはさておき、この店にはいかにも媼(おうな、翁の対になる言葉です)といった雰囲気の女性もいて、通常は彼女が接客してくれるのですが、このご時世にたった一つ和菓子を買っただけでも、丁寧に紙の袋で包装してくれた上にレジ袋にまで入れてくれ、さらに時間がある時にはカウンター越しではなく、笑ってしまう程に時間をかけて出入り口からわざわざ出てきて渡してくれます。
そして代金は、いつも円の単位の端数をサービスしてくれるのですが、それを小銭できっちりと全額払うと、
「まあ、ありがとう」
とまるで少女のように笑うのが実に素敵なのです。
なのでその店に行く時には、財布に1円玉と5円玉がしっかり入っていることを確認してから、でなければなりません。
折にふれ訪れる理由が、おぼろげながら分かってきた気がしました。
今後ともよろしくお願いします。
P.S. 番組の放送は10月29日 (金)の午前11時5分からです。