先日うれしいことがありました。
たまたま患者さんとアニメの話になりお勧めの作品を伝えたところ、1ヶ月後の受診の際には
「あのアニメ見てますよ」
と教えてくれ、さらにその1ヶ月後には
「全部見ましたよ、とても面白かったです」
と感想を述べてくれたのです。
そのアニメはテレビアニメだったので1話が約30分で全26回、つまり全部見終わるには単純計算で13時間くらい必要になります。
平均で2時間、長くても3時間もあれば見終わる映画とは違い、アニメを見るのに13時間も割くのは並大抵の労力ではありません。
その人が自分の勧めた作品を信じてくれ、大切な時間をその作品に費やしてくれたという事実が、ただただ純粋にうれしかったのです。
ちなみにそのアニメは「電脳コイル」という作品で、「となりのトトロ」「ふしぎの海のナディア」と並び個人的には3大神アニメの一つになります。
今から10年前の2007年に半年にわたって放送されたアニメで、ものすごく簡単に内容を説明すると・・・あっち側とこっち側をめぐる謎を解く話です。
全26話のうち最終コーナーを回ってからの展開が特に素晴らしく、当時のぼくは土曜日の夕方にこのアニメを見終わった瞬間から次の土曜日が待ち遠しくて恋しくて仕方なく、あの頃の1週間は拷問のように長く苦しい生き地獄だったことを今も覚えています。
逆にその後の10年では、あんなに強く何かを待ち焦がれたこともなければ、時の流れが遅すぎてじれったく感じたこともありません。
なおぼくが「電脳コイル」を見るようになったきっかけは・・・、
実は当時の患者さんとの関わりの中でたまたま知る機会を得たのでした。
その頃は主に子どもの診療をしていて、ある小学6年生の女の子から、
「家の2階に上がると影のようなお化けがたくさんいるので、恐くて2階に行けない」
という相談を受けていました。
自分なりにいろいろ対応していたものの一向に改善の気配がない中、ある日一緒に受診した彼女の母親から
「先生、お化けの謎が解けましたよ。この前この子と一緒にアニメを見ていたら、影のようなお化けが出てきたんですよ。そのアニメが原因に違いないんで、今後はもう見せないようにします」
という報告があり、彼女の方を見ると悲しいというよりはふてくされたような表情をしていました。
「そうですか・・・ちなみにそれは何ていうアニメなんですか?」
「えっとね、変な名前でしたよ、たしか電脳コイルとかいう・・・」
「電脳コイル!?変わった名前ですね~」
というわけで母親から教えてもらい、その時初めて「電脳コイル」というアニメの存在を知ることになるのですが、実はぼくはこんな風に人から教えてもらったものはなんでも基本的にチャレンジすることにしています。
そんなわけで善は急げで早速「電脳コイル」もチェックしてみたのですが・・・
正直に白状すると別にそこまで期待もせずに気軽に見始めたのですが、第1話からあっという間にその世界に引きずり込まれてしまい、気付けばエヴァ以来約10年ぶりにアニメにドハマリしていました。
実は見始めた時点で物語は半分以上進んでいたのですが、なぜか日曜日の早朝にだけニコニコ動画にアップされ昼頃には消されているという状況だったので、日曜日に早起きしてせっせと視聴しすぐに本放送に追いつくことができました。
その後彼女はアニメ禁止の効果なのか影のようなお化けは見えなくなったのですが、好きだったアニメが見られなくなっていたのでプンプンしながら不満を漏らし、一方ぼくは何食わぬ顔でそれをふんふんと聞きながら、
「大丈夫だよ、代わりにぼくが見てあげているから」
と心の中で彼女の分までこのアニメを全力で満喫しなければ・・・と使命感をより一層強くしていました。
さて今回は2つに分かれており、とりあえず前半の「あっち側編」はここまでです。
後半の「こっち側編」もよろしくお願いします。
クリニックブログ
あっち側とこっち側(あっち側編)
2017年07月17日