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エイプリルフールの約束

2018年04月01日

「はるばる軽井沢まで、献花のために車で行ったりはしません!」

2018年3月13日、作家の内田康夫先生が逝去されました。
ご存知ない方のためにいちおう説明しておくと、もしも今、日本3大名探偵は誰か?という国民アンケートを実施したら(ミステリマニア限定アンケートではなく)、金田一耕助と明智小五郎の2人はひとまず確定として、おそらく残るもう1人は浅見光彦になると思うのですが(『名探偵コナン』の青山剛昌先生もそうコメントしています)、内田先生はその名探偵・浅見光彦シリーズを生み出した巨人なのです。
つまり浅見光彦は現役の作家による作品の中ではNo.1国民的名探偵だったわけで、自分の生きてきた時代に浅見光彦シリーズが創作されたことを心から誇りに思います。
ぼくは昨年の10月頃からなぜか突然にむさぼるように読み始め、今年の3月末までで50冊近くを読んできました。
そんな空前の超個人的・浅見光彦ブームの真っただ中にこの訃報を知ったのですが、仮に浅見光彦にハマるのが1年遅く今年の10月頃であったなら、ぼくはおそらくそのニュースに対して特に何の感慨も抱かなかった可能性が高いです。
そして先生の生前のご意向により、軽井沢にある浅見光彦記念館では3/23-4/23まで献花台が設置されるとのことですが、献花のためにそこを訪れようなどとは絶対に考えなかったと断言できます。
ところが現実には先生がお亡くなりになる直前で、偶然にも浅見光彦にかぶれているのはとても不思議な巡り合わせであり、これはもう軽井沢まで献花に行くしかないっ!しかも車でぶっ飛ばして行く!と鼻息も荒く周囲に宣言してしまったのでした・・・
というわけで現在のぼくの最も好きな小説は「浅見光彦シリーズ」になるのですが、浅見光彦の最高の相棒といったら、それはやっぱり愛車のソアラで異論はないかと思います。
なお『皇女の霊柩』という話でソアラを追突された際には、
「おいおい、おれの愛しいソアラ嬢をどうしてくれるんだ」
と嘆いているくらいなので、彼にとってソアラは性別で分けると女性という位置付けのようです。
ちなみに前にもブログで書いたのですが、ぼくが最も好きなマンガは『行け!!南国アイスホッケー部』という作品で、奇偶にもなんとヒロインの名前が”そあら”なんですね。
最も好きな小説とマンガで、ともに主人公の最高のパートナーがソアラでつながるなんて、これまた不思議な巡り合わせを強く感じずにはいられませんでした。
そうやって浅見光彦シリーズを読んでいく中で、いつか軽井沢の浅見光彦記念館を訪れたいなあ・・・と漠然と考えるようになっていったのは、ある意味では当然の帰結だったと思います。
ぼくの現在の愛車はさすがにソアラではないのですが、『イタリア幻想曲』という話で兄の浅見陽一郎が大学時代にヨーロッパを一周した際に使ったのと同じメーカーの赤い車で、ナンバープレートは「3215=み・つ・ひ・こ」にしてしまったので、記念館に行くのならそれこそ作中の浅見光彦よろしくフットワークも軽やかに、愛車で颯爽と向かうつもりでした。
ただそれを実行に移すのは浅見光彦シリーズを全て読破してからと考えていたので、今回の件で献花のために行くということになると、個人的にはかなりの予定の前倒しになります。
前述のように周囲に宣言してしまったのでドライブのために道を調べてみたところ、なんと岡山からでは片道7~8時間かかるという衝撃の事実が発覚し、当初は日帰りを考えていたのですがそれだとかなりの強行スケジュールとなり、1泊2日でないと厳しいことが分かりました。
そんなわけで少しずつ軽井沢までのドライブに弱気になってきていたので、本日がエイプリルフールであることを利用し、逆説的に冒頭の嘘をつくことにした次第です。
これは嘘ですから、嘘にしないといけませんから、正直者呼ばわりなんて絶対にされたくありませんから、自分にプレッシャーをかけて何とか軽井沢まで行ってきたいと思います。
あと嘘つきといえば、個人的には世界3大ほら吹きはミュンヒハウゼン男爵、ピノキオ、そしてあと1人は意外かもしれませんが、迷うことなく日本を代表して浅見光彦で決まりです。
浅見光彦は良家のお坊ちゃんで育ちも良く、性格もおだやかで嘘なんて絶対につかない誠実な人、という印象を持っている人も多いかもしれませんが(特にTVドラマでしか見ていない人の場合)、それはとんでもない勘違いで彼は嘘ばっかりついています。
そういう意味でのタチの悪さという点では、事件解決のためには相手を平気でおとしいれるイメージが強いであろう刑事コロンボよりも、天才的なひらめきに物を言わせて毎度毎度カマかけまくりの浅見光彦の方がはるかに上です。
たまたま一番最近読んだ本が『歌枕殺人事件』という話なのですが、この作品では浅見光彦のそういう人間的な部分がとてもよく表現されていると思います。
角川文庫版だと以下のように
”浅見は要領よく調子を合わせて、おかみさんに取り入ることにした”(p.96)
”浅見さんて、すっごく調子いいんですね。あんな嘘ばっかし言って、悪いわ”(p.100)
”カマをかけた質問だが、ズバリ的中した”(p.140)
”浅見はケロッと、嘘をついた”(p.149)
など枚挙にいとまがない程です。
犯人は内田先生お得意の血縁のパターンで、トリックは笑ってしまう程にショボいのですが、彼の作品に慣れてくるとそんなことは全然気にならなくなっていきます。
極端な話、浅見光彦シリーズにおいては、犯人やトリックなんてどうでもいいのです。
TVドラマでは警察が、浅見光彦の正体(警察庁刑事局長の実弟)が分かった途端に手の平を返すシーンが楽しみという人が多いようですが、その場面はオリジナルでは意外な程に少なく、ぼくが楽しみにしていることの一つが前述の浅見の嘘であり、カマをかけまくるところになります。
最後に『歌枕殺人事件』で最も好きな場面は、
”『大歳時記』は九千八百円という代物だったので、浅見は立ち読みした。棚の上の方にあったのを、店の女性に頼んで取ってもらっただけに、手ぶらで退散するのは気の毒なような気がした”(p.130)
の人間味あふれる浅見光彦です。
律儀な浅見はその後代わりに二千六百円の本を買って帰るのですが、その時に払った一万円札のお釣りとその本の内容から、2つも大きな情報を得て事件解決にまた一歩近づいていきます。この都合の良すぎる展開こそ、本シリーズを貫いている小気味の良さであり、犯人やトリックですらもどうでもいいと思わせるまでのダイナミズムなのです。
すなわち浅見光彦シリーズはぼくにとっては勢いの面白さなので、完成度という点ではおそらく本格ミステリが好きな人には耐えられないかもしれませんが、でもそれこそがプロットを練らずにアドリブで書くという希有な作家、内田先生にしか創り出せない、圧倒的な躍動感ではないかと考えています。
本日はエイプリルフール、つまりは4月バカですが、ぼくは現在幸運なことに完全に浅見光彦バカであり、依存しているといっても過言ではありません。
それでは内田先生、本当にありがとうございました。
シャーロック・ホームズよりも、刑事コロンボよりも、ぼくは浅見光彦が大好きです。

今後ともよろしくお願いします。

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