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クリニックブログ

学術集会

2016年06月23日

ほとんどの医師は「○○学会」と呼ばれる学術団体に所属していますが、その学会が主催する学術集会(これも略すと学会なので、ちょっとややこしいですね)は春(5~6月)と秋(10~11月)に多く開かれます。
というわけでこの時期もまだいちおう春の学会(学術集会の方)シーズンであり、ぼくは今でこそあまり縁がなくなったものの、かつては毎年学会に参加していたものでした。
その中でも特に強く印象に残っているのは、2008年に東京であった「日本小児神経学会・学術集会」に参加した時のことです。
学会(クドいかもしれませんが、学術集会の方です)のことをご存知ない方もいるかもしれないので簡単に説明しておくと、会場に着くとまずは受付で参加費を払いネームカードをもらいます。それから自分でネームカードに所属と名前を書いて首にかけると、それ自体が領収書も兼ねているので参加費を払ったという証明にもなり、晴れて大手を振って中に入場できるというわけです。
ただ個人的にはネームカードを首からぶら下げるのは美学に反するため、受付で手続きをすませてネームカードをもらうと、基本的には何も書かずにポケットにしまい入場してしまうのですが、イメージとしては中学生が学ランのカラーを外したがるのに近いのかもしれません。
ちなみにこのやり方で入場を止められたり、その後にネームカードを確認されたことはありませんでした・・・
そう、忘れもしない、あの時までは。
その日ぼくは、かなり急いで学会の会場に向かっていました。
というのも、午後からポスター発表をすることになっていて、11時までにポスターを掲示するよう決められていたのですが、思いっきり遅れてしまっていたからでした。
そんなわけで会場に到着すると受付をしている余裕などはなく、いつもネームカードをしていなくても問題なく入場できるので、そのまま中に入ろうとしたところ・・・
大柄で屈強な眼光の鋭い男が2人、いきなり目の前に仁王立ちし、行く手を阻まれてしまったのです。
通常の学会ではあり得ない異様な緊張感に一瞬ひるんでしまったものの、自分に課せられていたミッションをはっと思い出すと、男達のすき間をかいくぐって果敢にも強行突破を試みてみました。
しかし次の瞬間、2人がかりで両脇をがっしり押さえられると、かなり強い力で元いた場所に戻されてしまいました。
そして改めて男達と向かい合うと、
「ネームカードのない方はお通しできません」
と受付の方を指差して言われたので、周囲の目が気になってきていたこともあり、真面目に受付をするしかありませんでした。
珍しくネームカードに所属と名前を書き、渋々でしたがそれを首にかけて再び男達の前に行くと、今度は無事に通してくれたので、ようやくポスターの掲示場所に無事向かうことができました。
なお後で分かったことですが、この時会場内には特別ゲストとして皇太子殿下がご臨席されていたので、そのための厳重警備体制だったそうです。
その証拠に殿下のご退席後はすぐに物々しい男達の姿も見えなくなり、ネームカードなんて誰も問題にしない普段の学会の雰囲気に戻っていました。

さて学会といえば学会そのものだけではなく、夜に仲間内で集まるのも楽しみの一つです。
この学会期間中のある夜には、当時在籍していた鳥取大学の脳神経小児科に関係する人達が数多く集まり、かなり盛大な宴が催されていました。
時間が経つと最初は決まっていた席も皆が自由に移動するようになり、気付けばとなりにいたのは当時教授だった大野先生だったのですが、いつになく神妙な面持ちでした。
「どうかされたんですか?」
「いやね、今回ゲストがすごかったよね」
「ああ、警備すごかったですよね」
「うん、来年どうしようかと思ってね」
そういえば翌年の学術集会は米子で、鳥取大学が担当になっていたのです。
「先生ね、誰かこの人!というゲストがいるかな?」
と真顔で訊かれたので、これはもう1000年に1度の大チャンスではないかと思い、
「いますいますいます」
と鼻息も荒く答えていました。
「えっ誰?」
「別にファンだからというわけではないんですけど、宮崎駿監督はどうでしょうか?」
「ああ」
「子ども向けの作品も多いですから小児とも関係が深いですし、インパクトでは今回のゲストにも決して負けてないと思います」
「ふむ」
「今年はポニョが公開されますから忙しくて頼んでも断られるでしょうけど、来年ならそうでもないと思うので来てくれる可能性がありますよ」
「そうか、ちょっと考えてみるよ」
「よろしくお願いします」
渾身のプレゼンテーションを手ごたえ十分で終えると、頭の中では会場である米子コンベンションセンターの控え室で、スタッフ特権で宮崎駿監督に握手してもらい、サインまで書いてもらってる光景が完全に見えていました。
ところが・・・
「先生がそこまで語ったくれたのだから、ぼくも正直に話すよ」
「は?」
なんとなくですが、雲行きが怪しくなってきました。
はっきり言って、嫌な予感しかしません。
「ぼくもね、ゲストに呼びたい人がいるんだよ」
「ああ・・・、そうですか」
と曖昧な返事をしながら、しかし皇太子殿下と勝負できる人が宮崎駿監督以外にいるのだろうか?と考えていると・・・
「高嶋ちさ子さんはどうだろう?」
という超ダークホースの登場に、お目目ぱちくり、お口あんぐり、お願いだから勘弁しちくり、といった感じで、すぐに言葉を返すことができませんでした。
「実はね、ぼくはあの人の大ファンなんだよ。1回でいいから、生で演奏を聴いてみたいんだよね~」
な、な、なんという公私混同・・・しかも小児まったく関係ねえし!と当時はあきれ返っていましたが、まさかその数年後に彼女がゲーム機のしつけ問題でスペシャリストとなり、小児と関係することになるとは思いもしませんでした。
さすがは教授、先見の明がありすぎます。
なお実際の学会ゲストは超ショボ~い人選でガッカリしたものでしたが、でも改めて冷静に考えると皇太子殿下がすごすぎただけなのでした。
今後ともよろしくお願いします。

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