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キーゼルバッハの惨劇

2014年05月23日

本を買うのはもっぱらネットで・・・
という人も最近では多いと思いますが、ぼくは今でも本屋に行くのが好きです。思いがけない運命的な出会いがそこにはあったりするからですが、先日もこんな本と出会いました。

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「スリランカの赤い雨」
なかなか魅力的なタイトルですが、ぼくの世代だと赤い雨といえば、

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やっぱり、ベルリンにかぎります・・・
のはずだったのですが、また新たな赤い雨が降ったそうで、ちょっとした問題になっています。

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ちなみに鼻の中は

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こんな感じになっており、特に鼻血が出やすい場所は血管が集っているところでキーゼルバッハ部位といいます。止血の際には、ここを圧迫することがポイントです。

・・・あれは忘れもしない、医師になって3年目の冬の夜。その夜ぼくは、とある田舎の病院で当直中でした。
入院患者さんのいる病棟の見回りを終えると、20時すぎには当直室でくつろいでいました。暖房の入った部屋で服を脱いでTシャツとトランクスだけの姿になると、特にやりたいことがあるわけでなくベッドで横になってゴロゴロしていました。ぼくは基本的に、家でもパジャマは着ない主義です。まだ時間も早かったので寝る気は全然なかったのですが、知らぬ間に眠ってしまったようでした・・・
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Z
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どれくらいの時が流れたのでしょう?
ぼんやりと意識が戻ってきた時、それが外部からの刺激によってもたらされたことに気付きました。
「ちょっと、ちょっと」
というハスキーボイスとともに、誰かがぼくの体を揺すっています。そういえば今日は当直で、当直室でふと横になったらそのまま寝てしまったんだなと、おぼろげながら現状を把握しました。
しかし、だとすると明らかに妙です。医師が当直室で起こされる場合は、通常はまず電話です。何らかの事情で電話がつながらず誰かが直接に部屋まで来た場合でも、ドアを叩いたり外から呼ぶのが普通です。それなのに、今のぼくは直に声をかけられ、実際に体を揺すられています。まだ目は閉じたままで、事態はさっぱり理解不可能でしたが、それでも目を開けてみる決心をしました。めったにはないことですが、おそらく看護師さんでは?というのが自分なりの推測でした。推測というよりは、そうであってほしいという願望に近かったですが。しかし、思い切って開眼したぼくの視界に入ってきたのは・・・
まさかの老婆でした。
老婆はなおも声をかけ、ぼくの体を揺すっています。お恥ずかしながらぼくはといえば、驚きと恐怖で頭の中はまっ白になり、ほとんど金縛り状態でした。それからしばらくして老婆はぼくが起きたことに気付くと、ぼくを起こそうとする試みをやめ、彼女がここに来た経緯を語り始めました。
自分は病院の近所に住んでいて、困ったことになったので夜遅かったけれど病院を受診することにしたのだそうです。到着して入口でチャイムを押しても返事はなく、ためしてみると入口のドアが開いたので中に入ってみました。1階は電灯がついていないため薄暗く、人の気配を探して2階に上がってみると電灯のついた部屋を見つけました。

ぼくは家でも、たびたびこんな風に電灯をつけたまま寝てしまいます。暗いのが怖いわけではありませんので、誤解なきようお願いします。

ドアノブを回してみると鍵がかかっておらず、ドアが開いたため中に入ることにしました。

その病院の当直室にはトイレがなく、寝る前にトイレに行く予定だったため面倒なので鍵をかけていませんでした。

部屋に入ると、あかりのついた部屋の中で下着姿の男が寝ていました。

かけ布団はしていませんでした、寝るつもりではありませんでしたから。

そこでこの男を起こすことにし、声をかけながら、体を揺すり続けていると、ようやく目を覚ましましたとさ・・・
めでたし、めでたし。
彼女の話を聞き終えた頃には、どうにか頭もスッキリしてきました。時計を見ると、ちょうど日付が変わったばかりの頃で真夜中でした。
それからは電話で看護師さんに連絡をして、外来の診察室の準備をしてもらいました。老婆には診察室の前で待っておいてもらい、ぼくは急いで顔を洗って寝癖を直しました。そして服を着て白衣を身にまとうと診察室に行き、老婆の診察を始めました。とはいっても、つい先程まで下着姿で爆睡していた男の診察です。おそらくは信用できなかったでしょうが、気を取り直して受診の理由を尋ねました。
「実は、鼻血が止まらなくなりまして」
とのことでしたが、
「ありゃ?」
と老婆の様子が少し変です。
「と、止まっとる!」
ったく20代男性のランジェリー姿を見ておきながら、鼻血が出たならいざ知らず、止まったという屈辱の展開でした。
結局は何もしないで帰宅してもらうことになり、今回のポール・マッカートニーではないですが、何しに来たんですか?という結果に終わりました。しかし夏だったら、もっと薄着だった可能性もあり、冬でよかった、と少しホッとしたのも事実です。
今後ともよろしくお願いします。

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