岡山県倉敷市阿知1-8-10 武部不動産ビル2F 倉敷 駅のほとりの心療内科 まくらぎクリニック

クリニックブログ

濃厚な空間

2021年06月28日

その当時はよく分からなくても、時が流れてなんとなく理解できるようになることって、結構ありますよね。
あれはたしか大学2年生の時、つまり20歳の頃の話なのですが、なぜかその年は水曜日が休みだったので、思い切って英会話に通ってみることにしました。
もっとも最初にまとめて授業料を払うような大手の英会話教室ではなく、同時通訳の人がほそぼそと開いていたもので、授業料は週1回で月に5000円だったと記憶しています。
たまたまフリーペーパーで目にして申し込み、4月の最初の水曜日の朝10時頃に教室に入った時、全く予想もしていなかった世界が待ち受けていました。
・・・マダム、マダム、ひとつも飛ばせず全員マダム。
生徒は約20人で、先生を囲んで輪になって座り、英会話というよりは、同時通訳の仕方を学ぶような内容だったのですが、自分以外は全員マダムという空間の超濃厚な密度に圧倒され、正直なところ内容はあまり覚えていません。
なお先生は50歳くらいの実直そうなメガネをかけた男性だったので、正確にはその場に男性はもう1人いたのですが、若い男性は正真正銘ぼくだけであり、出席するたびに若さを吸い取られるようなネットリとした雰囲気に、全員がかまきり夫人に見えてきて身の危険を感じ、これ以上はもう無理と早々と降参して数回で通わなくなってしまいました。
すると数週間後に家に電話がかかってきたのですが、その主は前述の英会話の先生からでした。
当時は携帯電話なんて便利なものはなかったので、家に電話をかけるしかない時代でしたが、よく考えたら小学校でも中学校でも高校でも、そしてもちろん大学でも学校から電話なんてかかってきた記憶がありません。
それなのに、まさか英会話教室から電話があるなんて、ちょっとした驚きでした。
電話は夜8時頃にかかってきて、母親から呼ばれて電話に出ると先生の声で、
「まあ若い男の子が1人だけで慣れないかもしれないけど、なんとか出ておいでよ~」
と不登校の子どもを諭すように猫なで声を出されたのですが、
「いや、無理です」
「そんなこと言わずに来なよ~」
といった謎の攻防が続きました。
せっかく親切に電話までしてもらい本当に申し訳なかったものの、結局、その後も英会話教室に戻ることはありませんでした。
当時は熱心な先生だな、くらいにしか思っていなかったのですが・・・
ただ、時が流れて今にして理解できるのは、きっと先生もたった1人であの空間はキツかったんだろうな、ということです。
「おいおい、オレを1人ぼっちにしないでおくれよ~」
という本音を最後まで口にしなかったのは実に見事だったな~と感心しつつも、でもひょっとしたら数ヶ月後には先生も心が折れて姿を消し、あの場は単なる熟女サロンと化していた可能性もなきにしもあらず、かもしれません。

そしてこの件を契機として、さらに思い出したのが、鳥取大学の脳神経小児科にいた時にお世話になっていた、小枝達也先生のことです(「行間を読んでほしいでござる」)。
当時は小枝先生の外来を見学し、発達障害の勉強をさせてもらっていたのですが、ある日、
「先生、今度の金曜日の夜、空いてる?」
と訊かれました。
特に予定はなかったので、
「はい、空いてます」
「だったら、ぼくがこれまでに関わってきた歴代の子ども達のお母さん方の会というのがあって、年に1回集まって食事をご馳走してくれるんだけど、一緒に行かない?」
と思いもよらぬイベントに誘われたのですが、空いてると答えてしまった手前、もはやぼくに退路は存在せず、ありがたくお供をさせていただくしかなかったのでした。
しかし、お母さん方からするとその会の趣旨はあくまでも小枝先生を囲む集まりであり、見も知らぬ人間が一緒にいたらお邪魔虫で、今ならさしずめ迷惑系ユーチューバーの類に該当するのでは?と懸念していました。
そして当日、小枝先生と一緒に松江の料亭のようなところに行き、マドモアゼル以上マダム未満といった年頃のお母さん方に囲まれて食事をしてきたのですが、正直なぜ自分が連れてこられたのか、当時はよく理解できていませんでした。
そんな中、患者さんやご家族から本当に感謝され、診療が終わってからも関係が続くような医師になるように、というメッセージだったのかな?など自分なりには解釈していました。
ただ、時が流れて今にして理解できるのは、英会話教室の熟女級ではないにしても、あれだけの数のお母さん方を1人だけで相手するのは、さすがの小枝先生でも辛かったのかな、ということです。
いずれにしても、今はコロナ禍でこのような空間は存在しないのですが、なんだか少し寂しい気がするのは、自分も年を重ねたということでしょうか?
今後ともよろしくお願いします。

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