先日、父方のおじさんが亡くなり、約10年ぶりに葬儀に参列してきました。
父親は男ばかりの四人兄弟の長男で、今回は四男の葬儀だったのですが、約10年前に亡くなったのが三男のおじさんでした。
実はお恥ずかしながら喪服を持っておらず、約10年前の時も葬儀ホールで借りてどうにか乗り切ったものでしたが、今回もまたお世話になってしまいました。
しかし逆に考えると、この間10年も喪服の必要に迫られなかったということなので、きっと幸運だったのだと思います。
そういえば勤務医だった頃に、上司の奥様の葬儀に参列したことがありました。
当時は黒っぽいスーツを持っていたので、ま～なんとかなるだろうと考え、しれっと参列していたものでしたが、今振り返るとバレバレだったことは間違いなく、でもそれを誰にも注意されなかったので、きっと優しい人たちに囲まれていたのだと思います。
恥の上塗りでついでに白状しておくと、このたび参列していた人の多くが数珠をしているのを見るまで、数珠の存在を完全に失念していました。
また葬儀に友引はよくないらしいですが、そういう言い伝えも全く意に介しません。
そんなことよりも、晴れていたら今日はいい日だ、と嬉しくなったり、バキュームカーを見かけたらなんて日だ！と嘆いてしまうタイプの即物的な人間です。
そろそろ正体を見抜かれそうなので、自ら明らかにしておきますが、我ながら呆れる程に信仰心というものを持ち合わせておりません。
これまでのブログでも神社にお参りしたことを書いてきましたが（「憧れの天河大弁財天社」「耳なし芳一の雪辱」）、神社仏閣を訪れるのは好きなものの、空間として興味があるだけで、それ以上の特別な思い入れは別にないです。
以前に島根県の津和野町に旅行した際に、町の運営する古民家に宿泊したところ、職員の方が宿泊施設の説明をしてくれた後で、
「観光などでご質問はありませんか？」
と訊いてくれたため、
「では太鼓谷稲荷神社と、乙女峠マリア聖堂への行き方を教えてもらえますか？」
と観光を予定していた場所の名前を出したところ、
「え！？神社と教会ですか・・・」
と微妙な空気になり、敬虔さなど微塵もないことが一瞬で露呈してしまい、気まずくなってしまったものでした。
しかしそんな自分でも、人との最後のお別れのけじめに、葬儀に参列する以上の場はないことに異論はありません。
おじさんは享年74歳で、金曜日の朝まで元気だったのに、急速に状態が悪くなって翌日に亡くなりました。
彼はいつも飄々としていて物腰が柔らかく、どんな人ともすぐに打ち解ける天賦の才に恵まれていたのですが、そんなおじさんの口癖が2つあります。
まず1つは、SNSとは無縁だったものの、驚く程の人脈の広さを誇っていた彼に連れられ、行きつけの店を訪れたりすると、店の人との談笑があまりにも和やかだったため、その帰り道に
「どういう関係ですか？」
と質問してみると、
「まあ・・・昵懇（じっこん）だな」
という具合に、昵懇という言葉をよく口にしていました。
ちなみにいちおう説明しておくと、昵懇とは「非常に親しい仲」という意味です。
なお彼が昵懇の仲の人にぼくを紹介する時には、
「これ、隠し子」
と言って人差し指を唇に当て、内緒のポーズを取るのがお約束でした。
これはどこでやっても必ずウケる鉄板の紹介だったのですが、こっちは何十回と同じことを繰り返されていい加減に飽きてきてしまい、アーティストで同じ楽曲を長く歌い続けていたら、どんどん歌い方が変わっていく人がいるのも納得できるようになりました。
そしてもう1つの口癖は
「そういうこと」
で、若い女の子のカワイイばりに、彼の会話の大半は
「そういうこと」
から構成されており、
「どういうこと？」
と思わず問いただしたくなる使い方であっても、「そういうこと」を放つ間やトーンを巧みに操り、その場を丸く収めてしまうような熟練した使い手でした。
そんなわけで彼から学んだ最大の教訓は、
”とりあえず困ったら、「そういうこと」って言っておけば、大抵はなんとかなる”
で決まりです。
彼は土曜日に亡くなったため、葬儀は日曜日に執り行われたおかげで参列することができ、今後の法事もゴールデンウィークの連休中にあれば逃げられそうにありません。
介護が必要になって家族に迷惑をかけることもなく、彼らしい本当に見事な去り際だったな～と、ただただ感服するだけです。
あの世でもよろしくお願いします。