岡山県倉敷市阿知1-8-10 武部不動産ビル2F 倉敷 駅のほとりの心療内科 まくらぎクリニック

クリニックブログ

50,000Hz

2016年03月03日

「実はWi-Fi (ワイファイ)が飛んでると、しんどくなるんですよ」
とその人が教えてくれた時、正直なところ本気でその話を信じることはできませんでした。
ご存知ない方のために一応説明しておくと、Wi-Fiとは無線LANの規格の1つで、無線LANとは無線、つまり有線のLANケーブルではなく電波でインターネット回線に接続し、通信を行えるシステムです。
スマホやタブレットなどの電波で直接通信するのに比べると、Wi-Fiで接続した方が一般的には電波は安定していて、しかも高速で、とどめにはデータ通信料もかからないとイイことずくめです。
「あとテレビ局も、いろんな電波が多いからダメですね」
彼は年齢は50歳ぐらいで、テレビ局に出入りすることのある仕事なのは知っていましたが、それにしてもハイそうですかと鵜呑みにできる話ではありませんでした。
するとそんなぼくの気配を察したのか、
「信じてもらえないかもしれませんが、昔から電波とか音にはすごく敏感なんです」
と彼は弁解するかのように話し始めました。
ちなみに音は音波という波の一種であり、波という点で電波と共通しています。
人間が聞くことができる可聴域は20~20,000Hzの音で、以前に「16,000Hz」という回でも書きましたが、17,000Hz前後の高い音はモスキート音と呼ばれ、20代前半の若者でないと聞こえないとされています。
なので
「昔パイオニアのオーディオの試聴会に行ったことがあるんです。その時、高い音がどこまで聞こえるかというイベントがあって最後まで残ったんですが、50,000Hzまで聞こえたんですよ」
と告白された時には、あまりにも次元が違いすぎて唖然としてしまいました。
人間の鼓膜で聞こえる音は20,000Hzまでが限界というのが長い間の定説でしたが、近年ではそれ以上の音(=超音波)に反応する例が確認されており、そのメカニズムとしては骨伝導(後述)が考えられています。
さらに実際には聞こえていなくても、20,000Hzを超えた超音波を含む音の聴取が人間の生理活動、主に脳活動で快感を示す反応をもたらすという説があります。ハイパーソニック・エフェクトと呼ばれますが、鼓膜では不可能な超音波を受容するメカニズムの候補に挙げられているのはやはり骨伝導です。
「試聴会が終わるとパイオニアの人からスカウトされまして、当時パイオニアには50,000Hzまで聞こえる人が5人いたそうです。どうも試聴会でそういう人材を発掘してたみたいですね」
「へー、すごいですね」
「子どもの頃は音の方を向いたら、私と犬しか向いてなかった、なんてこともよくありました。でも昔の話です。最近はスマホのアプリでチェックできるんですけど、20,000Hzぐらいまでしか聞こえなくなってしまいました」
「それでも十分すごいですよ」
「耳鳴りが最近あるんですけど、それが18,000Hzぐらいなんです。だからこの耳鳴りは、他の人にはあっても聞こえないんだなって思うと少し損した気分になります」
「たしかに」
「あと音の聞こえ方が、手で何か・・・たとえば水晶やスマホを持っていたり、腕時計とか数珠を手首にしていると、それで変わってくるんですよ」
「え?」
「いや本当なんですよ、この腕時計とか数珠もたくさん試してみて、それで一番よく聞こえるものを身に付けるようにしてるんです」
にわかにはアンビリバボーな話でしたが彼の話には妙な説得力があり、当初の疑念はもはや完全に消え去っていました。
人間が音を聞く時には音が空気を通って鼓膜を振動させ聴覚神経に伝わる気導音がメインですが、自分が話している時には声帯の振動が頭部の骨を介して直接に聴覚神経に伝わる(これを骨伝導と呼びます)骨導音も発生し、気導音と骨導音が合わさったものを聞くことになるので、録音された自分の声を聞いて違和感を持ったことがある人も多いのではないかと思います(録音された声は気導音だけだからです)。
これは勝手な仮説ですが、もし彼が骨伝導で超音波を含む音を知覚しているのであれば、腕時計や数珠が手首のでっぱりで骨伝導に影響を与えているのかもしれません。

尺骨茎状突起
このでっぱりは尺骨茎状突起という名前ですが、彼に確認してみると手首に付けるものがここに当たる時の方が音が変わるような気がするとのことでした。
参考までに紹介しておくと南アフリカのケンタッキー・フライドチキンには「Sound Bite」というスピーカーがあり、テーブルに両肘を置き耳を覆うと音楽が腕の骨を伝わって手のひらから聞こえてくるらしく、この仕組みに骨伝導が応用されているようです。

sound bite

こんな感じでなかなか楽しそうなので、是非とも体験してみたいですね。
というわけで冒頭とは一転して彼の話にすっかり聞き入ってしまい、最初はスピリチュアルな話かと思っていましたがもはや信者と化しており、
「この数珠を身に付ければ、20,000Hz超えも夢じゃないですよ」
と勧められたらそのまま買いかねない状況でした。
なおWi-Fiなどの電波で体調不良を訴える場合は、海外では「電磁波過敏症」という病気の概念も一応ありますが、残念ながら日本ではまだ認められてはいません。
たしかにそれを認め始めると、「霊的過敏症」なんかも認めないといけなくなる可能性があります。
ただ今の日本は空気を読むことにちょっと敏感になりすぎで、空気を読みすぎてしまう「空気過敏症」が蔓延しているような気がします。
実際にはそんな空気など存在していなくて、単なるエア空気だった・・・ということも決して少なくありませんので気の遣いすぎにはどうかご注意を。
今後ともよろしくお願いします。

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